仕事は楽しいかね？　⑫試すことは簡単だが、変えるのは難しい

第十二章

覚えておいてくれ。「試すことは簡単だが、変えるのは難しい」ということを。

老人はまた話し始めた
一番簡単なものから始めよう
問題点や不平のリストからね
彼は実際にあった話を
いろいろ今回も聞かせてくれた
その中でも惹かれたのは
クロードオルニーの話だ

オルニーは
カセットテープや
ビデオテープの
教材を販売する
ビジネスで大成功を収めている

では彼はどっかと
腰を下ろし
テープを売って
億万長者になろうと
したのだろうか
それは違う
彼はじっくり
腰を据えて
家族の問題を
解決しようとしたのだ

オルニーは
問題を抱えていた
自分が在籍していた大学に
彼の息子が入学希望を
出したのが却下されたんだ

彼は息子が
手助けを必要と
していることに気づいた
図書館に行って
勉強や授業に
関する本を片っ端から読んだ
でもどの本にも
勉強の時間を多く持てとか
テレビを見るなとか
誰でも一度は
聞いたことがあるような
気が滅入る用な
アドバイスしかなかった

彼はわかっていた
そんなことを
息子に伝えたとしても
役には立たないことを

彼は自分が受け持っている
優秀な学生たちが
高得点をとるために
何をしているのか
それを調べることにした

授業中どの席に座るのか
どんなふうに勉強するのか
どんな要領で暗記するのか

他の教授にも意見をもらったり
教育に関する記事にも目を通した

たとえば答案用紙も
見た目も重要なんだということも知った

ある教授が学生の書いた
汚い答案用紙を妻にすべて
書き直させて別の大学院生に
採点させたときのことだ
奥さんが書いたきれいな答案には
すべてAが付けられたという
学生が書いた汚い答案の
ほとんどがCだったという

もちろん変わったのは
見た目だけだが役立つ情報だった

また計算を必要とするテストでは
数学的な間違いの多くは
単に横の列を
揃えて書かないせいで起きる
数字をきちんとまっすぐに
並べて書けば間違いは減るのだ

オルニーはこのように
実際に役立つことを
何十となく
息子に提案した
そして息子は見事に
優等生名簿に
名を連ね、父の思いに応えた

この話にはまだ先がある
オルニーは自分のアイディアを
他の学生にも聞かせたが
息子と同じように
成績が上がった

同じように高校生に
やらせてみたり
ＤＭを送って
学生を集めようともした

彼は試す人だった
やってみたことの
多くは失敗だったが
彼はいつでも
幸運に巡り会える
準備が整っていた

有名なコラムニストに
手紙を書いて紹介を
お願いすると
３千を超える応募の中から
選ばれて紹介されたり

ある結婚式で
偶然隣になった
教え子にテープなどの
話をしたところ
友達に紹介したいと言われ
紹介した家の娘の
成績が上がると
喜んだ父親が
偶然にも
インフォマーシャル
関係の仕事をしていて
オルニーの考えた
勉強法はすぐに
テレビで紹介された

クロードオルニーに
である人は
彼をツイてるやつだと
思うだろう

でもただ単にツイてた
わけじゃない

彼には解決するべき
問題があって
そのために大変な
努力をした
我が子のために
必死な努力を
一体何人の人ができるだろう

そういう努力をするとしても
一体何人の人が
最初に浮かんだ
いいアイディアを捨てて
さらに何十もの
アイディアを考え出すだろう

大した努力もしていないのに
ちょっとしたまぐれあたり
そんな風にみえるなんて
そんなサクセスストーリー
はありえないよ

ここで一つ疑問が残る
幸運ではなく
努力が成功の秘訣だったかと
答えはイエスでもありノーでもある
成功の秘訣が一つしか無い
なんてことはない

オルニーの成功するための
要素を上げてみよう
よい父親であること
モンＤ内を解決すること
昔ながらの考えを捨てること
積極的に試す人だったこと
あらゆることをやってみること
などだ

オルニーは
アイディアの流れに飛び乗った
まずはとにかく始めること
どのアイディアが
最終的に実を結んで
どのアイディアが
実を結ばないかなんて
確かめる方法はないんだ
できるかぎりいろんなことを
やってみること
そうすればアイディアが
また別のアイディアを
引き寄せてくる
始めさえすれば
新しいアイディアのほうから
自分のほうへ近づいて
飛びついてくる